万年筆専門店店主・吉宗氏へのインタビュー②
みなさま、こんにちは。
大丸神戸店地下2階高級筆記具売場では、神戸元町にある万年筆専門店「Pen and message.」の店主・吉宗史博氏がペン先調整を施した万年筆を販売しております。
ペン先調整士である吉宗さんとはどんな方なのか、吉宗さんへのインタビュー第2弾です。
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「万年筆専門店店主・吉宗氏へのインタビュー①」からの続きです。
――調整士になろうと思ったきっかけを教えてください。
今の仕事を始める前から万年筆の販売の仕事に携わっていました。そこで、お客様に安心して万年筆をご購入いただこうと考えたときにペン先調整は必要なサービスだと思ったのがきっかけです。
(グラインダーで調整中)
――けれども、「ペン先調整」とはあまり聞き慣れないと言いますか、一般的な言葉ではないと思うのですが、どうやって調整の仕方を学ばれたのでしょうか?
はじめは万年筆メーカーに習いに行って基本的なことを勉強しました。あとは、独学で試行錯誤しながら身につけました。今もお客様とのやりとりや一人で考えたりしたことから思い付きのようなことはあって、日々勉強だと思っています。
――ペン先調整とは誰かから教えてもらってすぐできるものではなく、日々の積み重ねの経験によるところが大きいということですね。
万年筆の販売にペン先調整のサービスが不可欠と思われてその技術を学ばれたとのことですが、そのまま同じところで働き続けるという選択肢もあったと思います。なぜ、ご自身で万年筆専門店を開こうと思われたのですか?
独立する前は大きなお店で万年筆の販売担当をしていました。それは、とても楽しく充実していて、こんな楽しい仕事をずっとしていたいと思っていたのですが、組織の中で自分だけがこんな楽しい思いをしていては申し訳ないという気持ちになってきました。
――ええっ。
あとは、採算も取れるだろうと思いましたので、お店を始めることにしました。
――お店はいつオープンしたのですか?
2007年9月23日です。その日が「万年筆の日」だということを後から知りました。
――偶然「万年筆の日」にオープンされたのですか!すごい。奇跡的ですね。
ということは、2023年9月で創業17年目に突入されるということですが、今までいろんなことがあったと思います。お店をオープンされた当時の自分に声をかけるとしたら何とかけますか?
そうですね。。ああすればよかったということがたくさんあって何と言っていいかわかりませんが、その日来てくださったお客様への感謝の気持ちは忘れるな、と言いたいですね。
――販売の仕事をする私にも言えることですね。
そうですね。このお店(Pen and message.)がオープンしたてのときに、やはりオープンしたてのときはご来店くださるお客様も少なくて、その中でも来てくださるお客様にとても感謝した気持ちは今でもよく覚えています。
――話が変わりますが、売り場でお客様に「万年筆ってどういうときに使ったらいいですか?」とよくご質問いただきます。吉宗さんは万年筆をどのような場面で使われていますか?
たいていの場面で万年筆を使っています。
――例えば?
基本的に一冊のノート・手帳はすべて同じインクの色、同じ線の太さで書きたいと思っていますので、例えばダイアリーは、国産の細字一本だけだったり、すべてのペンに用途が決まっていて、その用途に限定して使っています。
(万年筆は日常で使っています)
――インクや線の太さを統一したいというこだわりは面白いですね。
では、いままで数多くの万年筆を見てこられたと思いますが、吉宗さんが自身の万年筆を選ぶポイントは何かありますか?
出会いと縁でその時に人とのつながりを感じることがあれば、そのペンを手に入れたいと思います。
――そのペンを通じて人との縁を感じる、ということですか?
はい。そのときの雰囲気を大事にしたい。大切で忘れたくない人とのやりとりを連想させる万年筆がでてきたら、そのペンを手に入れたい。そしてそのペンを見てその人とのつながりを思い出したい。そういう万年筆は、長く使えるものがほとんどですね。
――では、見た目のデザインや軸の色で選ぶことはほとんどない、と?
そうですね。デザインや軸の色よりも、どちらかというと書き味に惹かれることが多いです。例えば、シャキッとしてて、硬めのペン先の方が書くことに適しているような気がするので好きですね。
――では、たくさんお持ちの万年筆の中で特別に思い入れのある万年筆はありますか?
はじめて買ったペリカンのM800という万年筆です。
仕事をはじめてから、学生時代から趣味にしていたレコードをもう聞くことはないだろうと思ってそれを売って、そのお金でM800を買いました。これからは万年筆を一生の仕事にする、という決意のしるしであったかもしれません。そのM800は今も使っていて、いい万年筆をはじめに知ることができて、これが最初の万年筆でよかったと思いました。
(吉宗さんのペリカンM800)
――ペリカンのM800は神戸店に置く万年筆にも選ばれています。M800のいいところを教えてください。
万年筆を自然に持てる、というか、何も気にせず立て気味でも寝かせ気味でも書けるところでしょうか。人が万年筆で書くことにおいて計算しつくされたバランスなのではないかと思います。
――実は私もM800は持っていて、その長所は実感しています。
私は特に紙とペン先が触れただけでインクが出て、ストレスなく文字が書ける瞬間が好きなのですが、吉宗さんは万年筆を使っていて気分が高まるときはどんなときですか?
ブログや雑誌などの記事を書くことも多いのですが、その記事を書くために考え事をするときにも万年筆を使っていますが、色々考えを巡らせているときに自分なりの切り口が見つかって書き始めるときです。
――アイディアが浮かんだり、答えが見つかったりして視界が広がったときに手に取る万年筆は特別ということですね。
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「万年筆専門店店主・吉宗氏へのインタビュー③」に続きます。
吉宗氏の調整済万年筆は地下2階高級筆記具売場でご用意しております。(予告なく終了する場合がございます。
大丸神戸店
地2階 高級筆記具売場