万年筆専門店店主・吉宗氏へのインタビュー①
みなさま、こんにちは。
地下2階高級筆記具売場では、神戸元町の万年筆専門店の店主・吉宗史博氏がペン先調整を施した万年筆のお取り扱いしております!
吉宗氏は、万年筆愛好家の中ではとても有名な方なのですが、ご存じない方へ向けて「ペン先調整」とは、「吉宗氏」とはを知っていただくために、売場スタッフが直接ご本人へお話を伺ってまいりました。
吉宗氏が店主を務める万年筆専門店「Pen and message.」は、JR元町駅西口を山側へ少し歩いた閑静な住宅街の中にあります。店内は落ち着いた雰囲気でゆっくりとした時間が流れています。
――こんにちは。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
(Pen and message.店主の吉宗さん)
――さっそくですが、まずこの「調整済万年筆」 とはどのような万年筆なのでしょうか?
新しい万年筆に一度インクを入れてペン先の状態をチェックして、当店(Pen and message.)の基準に合わなければペン先調整を施したもののことを言います。当店の基準とは、滑らかに書けること、紙に置くだけでインクが出ること、書いているうちにインクが薄くなったり途切れたりしないことです。
――ということは、メーカーから出荷される新しい万年筆は、そうでない状態のものがあるということなのでしょうか?
万年筆は工業製品なので、ある一定基準を満たしていれば出荷されます。中には書けるけれど書き味がよくなかったり、書き出しが出にくいものも良品として出荷されることもあります。また書き味もペン先調整によってさらに良くなることが多いので、本来の万年筆のポテンシャルを最大限発揮できるようにペン先調整をしています。
――では、具体的に「ペン先調整」とは、万年筆にどういうことをするのでしょうか?
ペン先のくい違いがあれば修正し、ペンポイントの形がいびつな場合は形を整えるために研ぎ直します。
――すみません。このブログを読んでくださっている方へ、まずくい違いとはどのような状態のことなのか教えてください。
まず、万年筆には金属製のペン先が付いていて、その先端にはペンポイントと呼ばれる球状のイリジウム合金でできた硬い金属が付いています。良い状態のペン先はそのペン先の中央にスリット(切り割り)が入っていて、ペンポイントの形も左右に差がなく整っています。くい違いというのは、そのペンポイントがきれいに揃っていなかったりして不揃いな状態を言います。くい違いがあると、書き味が引っかかることが多いです。
――それは解消したほうがよさそうですね。
ペン先調整はそれだけでなく、ペン芯とペン先をしっかりと密着させて「毛細管現象」がしっかり働くようにします。
――「毛細管現象」 ですか・・・
はい。細い管を液体の中に立てると、管の中の液体が管の外側の液面より高くなる現象のことを言います。
万年筆は重力に関係なく、インクがより細いほうへ移動する現象を利用しているんです。
――では、どんな道具を使って調整をされるのでしょうか?
まずルーペを使ってペン先・ペンポイントをよく観察します。25倍のルーペを使ってペンポイントの状態を見ます。それから、ほとんどの場合は手で調整を行いますが、必要に応じてグラインダーでペンポイントの形を整えます。
(ルーペでペンポイントの状態を確認しています)
――小さなペンポイントを触ったり削ったりととても繊細な作業ですね。ちなみに、ペン先調整をされるときに一番心がけていることはなんですか?
それぞれのメーカーらしさをなくさないように、そのメーカーの標準の状態を壊さないように、そのペンにとって一番いい状態にすることを心がけています。
――「メーカーらしさ」とは、メーカーごとにペンポイントの形やインクの出方に特徴があるということですか?
はい、そうです。書き味にもそれぞれ個性があります。
(グラインダーでペンポイントの形を整えます)
――数ある多くの万年筆の中から吉宗さんに大丸神戸店で展開する調整済万年筆を選んでいただきました。この万年筆を選ばれた理由を教えてください
万年筆の定番だからです。多くの万年筆の中にそれぞれのメーカーの代表的なものが存在します。そのような万年筆を選びました。そういったものの多くは長くたくさんの人々が使ってきていて歴史があります。そういった万年筆は誰が書いても書きやすく長く愛用することができると思っていて、また、その良さは歴史が証明していると思います。
――ということは、5万円以上の高額な万年筆も選ばれていますが、それを万年筆初心者の方が使ってもいい、ということになるのでしょうか?
もちろんです。是非使ってみてほしいです。「万年筆で文字を書く」魅力が発見できると思います。
――万年筆はお手入れが必要とお聞きします。お手入れとはどのようなことをしたらよいのでしょうか?
使っているうちにインク出が渋くなってきたり、書きにくくなってきたらペン先を水洗いします。弱い流水でペン先を流してもいいですし、コンバーター(ボトルインクを吸い上げる器具)を使って水を吸い上げたり吐いたりしてペン先を洗います。そのときにお湯や洗剤は使わないでください。また、インクの色を変えるときも洗浄したほうがいいでしょう。
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「万年筆専門店店主・吉宗氏の調整済万年筆、お取り扱いスタートしました②」に続きます。
吉宗氏の調整済万年筆は地下2階高級筆記具売場でご用意しております。(予告なく終了する場合がございます。)
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